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The House 2009年、Kayanoの新しいモデルハウスがOpenします。

僕と渚の家づくりストーリー/ふらんく・ふぁん・でる・かーん

あれもこれも欲しい、そして、格好いい家に住みたい世代に。 第4話

目まぐるしくも、充実した楽しい2ヶ月だった。

僕は昨晩ウィキペディアで調べた通りに、神主さんからさかきを受け取って、祭壇に向かって頭を下げた。さかきは、左掌を上に、右掌を下に向けて受け取る。そして、時計周りにさかきを反転させて、切り口の部分を向こうにむけて祭壇に置く。そして、二礼二拍手一礼。僕は頭の中で自分の動きを反芻しながら、神事を終えた。僕の次が渚で、直太郎さんがそれに続く。今日は直太郎さんの会社の工事担当者の方も参列してくれていた。
 神主さんの祝詞が上がって、地鎮祭は終了となった。
「おめでとうございます」
地鎮祭が終わった後、直太郎さんがそう声を掛けてくれた。
「ありがとうございました。少し緊張しました」
「所作はばっちりでしたよ」
僕は少し照れくさいような心持ちになった。ウィキペディアで調べたとは、いい難い・・・。

契約事が済むと、工事用の実施図面を使っての打ち合わせが始まった。契約には百合丘材木店さんの会長さんでもある、直太郎さんのお父さんも姿を見せてくれた。僕たちの家づくりの案内役をして下さった方との再会に、僕と渚は嬉しさを覚えた。『家づくりには縁とフィリーングが、大切でね。君たちも倅のことが気に入らんかったら、うちになんて頼まなかったはずだよ』契約が終わると、会長はそう言った。『そして、家が完成して終わるような関係では、また困る。むしろ、完成した後の方が長いお付き合いが待っているからね』含蓄のある言葉に、僕と渚は頷くことしか出来なかった。そして、安心もした。

直太郎さんの言う通り、寸法の数字の入った図面での打合せが始まると、具体性が増して、僕と渚は家づくりにどっぷりになった。壁や設備の色決めの場面では、二人の意見が分かれるようなことが多くあった。とくにクロスの色決めは意見の衝突が凄かった。それでも、直太郎さんのナビゲーションで打合せはスムーズに進んだ。途中、僕がバスルームにテレビを付けたいと思い立ったことだけが、当初の計画にはなかったことだった。その部分だけ追加の注文となった。
最後に図面承認印を押して、打合せは終了した。僕の仕事の都合で打ち合わせができないようなときは、渚が一人で打合せに出向くこともあった。
直太郎さんの会社では、僕たちの承認印のない図面での工事は行わないのだという。『お客様が承認を下さった図面以外の工事はしません。そして、お二人の印がない図面は無効ということにしておかないと、図面がごちゃごちゃになって、間違った工事をしてしまうことへの防止策です』直太郎さんはそう言った。それを聞いて、僕と渚はより一層安心感を強めた。



地鎮祭が終わると、配置の確認が待っていた。僕たちの敷地には縄のようなものが引いてあって、それが建物の外周部分とのことだった。
「やっぱり、小さく見えます?」
笑顔の直太郎さんが言葉を発した。
「はい、なんとなく・・・」
渚がそれに答えた。
「でも、図面通りなんですもんね」
僕は製本された図面を開きながら、縄を辿って敷地の中を歩いてみた。基礎工事中の建物を案内してもらったときと同じく、僕も家が小さくなったように感じた。だけど、図面を見ると僕たちには結構広い。僕が歩いていると、直太郎さんが敷地に線を引き始めた。
「ここが玄関で、ここがホール・・・」
直太郎さんは敷地にプランを描いているようだった。工事担当者の松崎さんの手伝いをもらって、僕もそれに倣った。僕は水廻りの配置線を敷地に描き込んでいく。そして、大切な読書コーナーも。松崎さんはスケールを手にして、丁寧に寸法を教えてくれた。
「出来上がりっ!」
僕と直太郎さんの手が止まると、渚が弾けるように大きな声を出した。
「だいたいですけど、こんな感じですね」
腰に手を当てた直太郎さんが全体を見渡した。
「こうみると結構広いわね」
「そうだね」
渚の言葉に僕はそう返した。
「ここにパオロッサです」
松崎さんが手で空間に四角を表現してくれた。
「そっか~。綺麗なんでしょうね~」
渚の言葉に松崎さんは大きく頷いた。直太郎さんが『抽象画のように飾る』と言っていたパオロッサという南アフリカの樹はリビングの中央の壁に配することになっていた。その上には、トップライトをつけた。陽のあたり方によって表情を変えるパオロッサがインテリアを引き締めてくれるのだとういう。渚はそれにぞっこんになっていた。僕もそれが楽しみだった。僕は読書コーナーのベンチに座るイメージを頭に浮かべながら、空中椅子の体勢を保って、図面を開いた。どうしても表情が緩む。
「また、にや顔になっているわよ」
「しょうがないじゃん」
僕は空中椅子の体勢を解いて、腰を上げた。たったこれだけの負荷で、もう腰が痛む。運動不足を痛感する。
「ここの本棚は僕のものだからね」
「分かってるわよ」
僕の言葉に渚が舌を出して答えた。
「いかがですか?」
「いい感じです」
「外周部も今は小さく見えるかも知れませんが、建物は図面通りに出来ますので」
僕と渚は直太郎さんの言葉に同時に頷いた。松崎さんが外周部に線を引き始めた。僕と渚、直太郎さんが松崎さんの方へと目を向けた。
「あの、ここバルコニーです。渚のバルコニー・・・」
一瞬の間があって、3人同時に声を上げて笑った。松崎さんはギャグを言うようなキャラではなかった。僕たちの笑い声に、松崎さんが少しだけ頬を赤くした。

「渚の~♫バルーコニーで~♪待ってて~」
帰りの車中、渚はずっと『渚のバルコニー』を口ずさんでいた。松崎さんのギャグがはまったらしい。
「気に入ったみたいね」
「いいじゃない?渚のバルコニー。これであの場所は私のものになったわね」
残念ながら僕のi podには、松田聖子は入っていなかった。



午後からはキッチンのショールームに出掛けた。渚はキッチンのカウンターと面材の色にまだ迷っていた。
「こんにちは」
直太郎さんは他に仕事があるらしく、ショールームは百合丘材木店さんでコーディネーターをしている長嶋さんが案内をしてくれることになっていた。長嶋さんは福岡の出身とのことで、『酒豪です』と直太郎さんから紹介を受けた。『家が出来たら一緒にお酒しましょう!!』渚は初対面の長嶋さんにそう言った。長嶋さんも笑顔で頷いた。その場面がきたら、僕は遠慮をしよう。渚も本気になったら結構飲む。だけど、長嶋さんの方が強そうだ。そんな雰囲気がある。そして、渚の好きなアンジェラ・アキに少し似ている。
「こんにちは。宜しくお願いします」
渚がショールームのエントランスで待つ長嶋さんに近づいた。二人は気が合うようだ。
百合丘材木店さんのほとんどのスタッフの皆さんとは、挨拶を交わすことが出来た。直太郎さんが紹介をしてくれたのだったが、それで僕と渚はより一層、百合丘材木店さんのファンになった。どのスタッフさんもいい人で、それぞれがそれぞれの分野でプロフェッショナルだという印象を受けた。
僕と渚は長嶋さんのエスコートを受けて、ショールームの中へと足を進めた。こういうショールームへ入るのは初めてのことだった。店内は明るく照明がされていて、キッチン、バス、トイレなどが煌びやかに展示されていた。
「まずは、キッチンのカウンターから見て頂きましょう」
バインダーを手にした長嶋さんが、僕と渚をキッチンが展示されているコーナーへと案内をしてくれた。
「こちらがご採用されるキッチンです」
長嶋さんが僕と渚をワークスペースへと導いて、キッチンの正面に回り込んだ。
「迷われているのは、ステンレスか人造大理石か、ですよね」
「はい」
僕は長嶋さんに頷き返した。渚はもうキッチンに釘づけになっていた。
「どっちがいいと思います?」
僕は素朴な質問を長嶋さんにぶつけてみた。
「うーん、お好みにもよりますが、私個人的にはステンレスをお勧めします。今のステンレスは、まず錆びの問題は気にしなくてもいいですし、仕上げのヘアラインも綺麗になっていますしね。長期的に見ても飽きがこないかな、って。あっ、これはあくまでも個人的な意見と思って下さい」
長嶋さんはそう言って、軽く頭を下げた。
「じゃあ、ステンレスにします」
「えっ」
渚は長嶋さんの一言で、あっさりとカウンターを決めてしまった。昨晩から僕にはあれだけ、あ~だこ~だ言っていたのに・・・。
「長嶋さんがそう言うなら、お任せするわ」
「あの、もう少しお考えになられる時間はありますよ」
長嶋さんが少し慌てたように、体の前で右手を振った。
「いいのいいの。次いきましょう」
これが渚の性格だ。決めるときはあっさりと決める。そして、そんな具合で、キッチンの面材、収納の仕様などが決まった。長嶋さんは渚の言葉に合わせて、忙しなくバインダーにペンを走らせた。
「以上、ですね・・・」
少しほっとしたように、長嶋さんが口を開いた。
「よしっ」
渚が小さくガッツポーズを見せると、長嶋さんは破顔した。
「凄いパワーです」
「決めるときは決めなくちゃね」
渚が長嶋さんに向ってウインクをして見せた。
「ね~、長嶋さん。これから時間あります?」
「ええ」
長嶋さんが腕時計を覗き込みながら答えた。
「じゃあ、お茶行きましょうよ。美咲町でいいカフェ見つけたの」
「いいですね~」
「どうする?」
渚が僕に目線を向けてきた。
「僕は帰るよ。長嶋さん、乗せて行って貰えます?」
「はい」
僕は帰って読みたい本があった。『オン・ザ・ロード』が佳境なのだった。
「じゃあ、宜しくお願いします」
僕と渚、長嶋さんはショールームの前で別れた。僕はチンクエチェントの中で二人を見送った。きっとあの二人は飲み友達になる。

第5話へ続く。



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